中国ビジネス

第6回【働いた人だけが知っている】中国ビジネス体験記『商社勤務の浅田(仮名)さん』

みなさん、こんにちは!今回は、第6回目となる駐在員の方の体験記ですが、今回も仕事に特化してご紹介します。

同じアジア圏といえども、中国人と日本人の感覚の違いは大きく、相互に理解できず溝が深まったりストレスがたまったり、また現地の状況を理解できない本社との板挟みになったりと優秀な社員でも中国という独特の環境のため中国赴任後心身ともに疲れきってしまう方や退職へ追い込まれる方も多いようです。

そこで、中国への赴任が決まった方や今後中国で成功を収めたいと考えておられる方のために、覚えておきたい3つのコツやポイントを実体験と共に分かりやすくご紹介したいと思います。今回は、

『中国ビジネス  3つのコツ!』

について、詳しく解説します!

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目次

コツ1 文化の違いを理解する

①コミュニケーションの違い

私は中国で約8年間生活しましたが、はじめはコミュニケーションの違いに驚かされることが度々ありました。

例えば、道端でおばさん二人が大声をあげて喧嘩していると思ったら、実はお互い遠慮しあって「私がおごる」と言っているだけでした。

またアパートのエレベーターでたまたま乗り合わせた近所の人(初対面)から「あなたの家の家賃はいくら?」と聞かれて驚いたり…

このように日本人の感覚で接すると、時にその言動が理解できなかったり、誤解したり、イライラさせられたりすることが多々あります。この文化や習慣の違いから部下や取引先との関係が悪くなってしまうかもしれません。そこでまず、中国人と日本人のコミュニケーションの違いを理解しておきましょう。

②はっきりと分かりやすく

日本は察する文化です。相手の考えや気持ちを察し発言します。プライベートなことにも配慮しますし、意見が違うときには相手の気分を害さないようにあえて遠回しに言うことも多いです。

聴く側もそのような意識があるので、何が言いたいかを察することに長けています。商談の時は、相手に配慮した形で主張し、譲れるところは譲り、という形で落としどころを見つけていきます。

しかし、中国は主張することが評価される文化です。あいまいな言い方や遠回しな言い方を好みません。中国語の特徴かもしれませんが、「誰が何をどうする」が非常に明快です。

また年収や家賃、年齢などのプライベートなことも結構ストレートに聞いてきます。商談の時は、お互いの主張を出し合いながら、落としどころを見つけていきます。

ですから、中国人の部下や従業員、取引先の人と接するときには、遠慮せずあいまいな言い方を避け、はっきりと伝えることを意識してください。特に日本語では主語を言わなくても伝わることがほとんどですが、中国語は主語は必須です。かならず主語を明快にしてください。また、良いのか悪いのか、原因と結果などを明確に伝えましょう。

【ノウハウ】
✓中国人は「結論 + 理由1、理由2、理由3…」という形の話し方を非常に好みます。先に結論や主張を述べてから、理由を一つづつ取り上げてみてください。スムーズなコミュニケーションに役立つでしょう。

✓契約の時は不明瞭な点を残さないよう、特に注意してください。後になって、相手の都合に良いように扱われることが多いからです。

③こまめに連絡を取り確認する

日本人は細やかな配慮を得意とし、確認・連絡を重視しミスを最小限にとどめようと努力します。いわゆる「報連相」(報告・連絡・相談)を大切にします。

しかし、中国人はこの「報連相」が不得意に見受けられます。取り返しのつかなくなる直前に連絡や相談が入り、困ってしまったという方も多いです。

この後で取り上げますが、中国人は面子を非常に重んじるので、一人で解決したい、一回でパーフェクトに仕上げたいなどの気持ちから、「相談」することが苦手なのです。

ですから、部下や従業員に何か指示を出したあとは、こまめにコミュニケーションを取って、進捗状況を確認することをお勧めいたします。

【ノウハウ】
✓また中国語で「差不多 チャーブドー」という便利な言葉があります。日本語では「大体そんな感じ」という意味ですが、サバを読まれる可能性もあるので、大切な部分ではきちんとした数字を把握しておくなら、トラブルを防ぐことができるでしょう。

✓別の注意点としては、早すぎるアポイントはお勧めしません。中国のことわざに「計画は変化についていけない」というものがあるように、中国の状況はコロコロ変わります。しかも日本では滅多にあり得ないようなことが頻繁に生じます。例えば、停電、機械の故障、バスや地下鉄など交通機関の急な変更…などです。それゆえに中国は状況優先の考え方が多くみられ、あまり先のアポイントは好まれません。早めにアポイントを取ったとしても、前日などに確認の連絡を入れておくなら、スムーズに仕事が行えるでしょう。

④ビジネスでの違い

以前の私の職場は、パートアルバイト並みの速さで正社員が入れ替わっていました。また中国人の友人たちを見ていても、何年かで仕事を変える人が多く、違和感を感じていました。

また休み時間に対する感覚も違います。中国のお昼休みは比較的長く、2時間とか2時間半もざらです。それで別室で昼寝したり、人によっては折り畳み式のベットを持ち込んで本格的に昼寝をしている人もいます。

このような違いの根底には、会社と仕事に対する価値観の違いが大きく関係しています。

⑤個人主義

日本では社員は会社に入社した後、その会社に所属するという意識を持ちます。それゆえに、チームプレーが好まれ、一致や協力の精神がみられます。

長く会社にとどまることを美徳とし、忠誠心があるとか勤勉で真面目であるとみなします。コツコツとキャリアを積んでいく人が多いでしょう。

しかし中国では、仕事はチームプレーというよりも個人プレーと見る人の方が多いです。会社とは個人の能力を発揮する場、キャリアアップの場とみなします。

ですから、日本人が自己紹介の時に必ず会社名、部署名を先に名乗ることに違和感を覚えるようです。

効率よくスピーディーに昇進していくことを望む人が多く、ある会社で一定のキャリアを積み、自分にとってもっとメリットのある仕事の機会が訪れればそちらに就職し、ジャンプ式でキャリアをあげていきます。下記の統計を見ても違いは一目瞭然です。

データ項目 数値
中国の平均離職率 18.8% (2021年)
日本の平均離職率 14.2% (2020年)
中国の平均在職期間 34か月(2014~2015年)
22か月(2017~2018年)
日本の平均勤続年数 12.2年 (2018年)

※Linked Inの過去のレポート参照
※国税庁:民間給与実態統計調査(2018年)参照

ですから仕事に対する価値観の違いを理解していないと、協力精神がないとか裏切られたと思ってしまうわけですね。では、どの様に対応していけばよいのでしょうか?

【ノウハウ】
✓まず中国人は損得勘定に敏感なので、その会社に勤めること、またチームのメリットを目指すならば、その人自身にとってもメリットになる、ということを日頃から強調しておくことが大切です。

✓また、ぜひこの会社で働き続けたい、キャリアアップしていきたい、と思わせることが大切です。中国は結果主義の国でもあるので、頑張った分すぐに目に見える結果(昇進や給料アップなど)がないとモチベーションを保ちにくいかもしれません。会社の規定にもよりますが、何かしらの「ご褒美」があるならば、そこで働き続けたいという意欲を引き起こすことができるかもしれません。

✓さらに、中国人は会社というよりも、を重視することが多いように思われます。それで、上司としてよく話を聞いてあげたり、一緒に食事をしたり、会社という枠を超えて個人間の信頼関係を築いていくなら、この上司についていきたいと思ってもらえるかもしれません。私が中国にいた時も、リーダーのパワハラやわがままに振り回されてうんざりしている中国人の友人から愚痴を聞くことが多かったので、人間力のある上司は非常に信頼されるでしょう。

コツ2 面子を守る

①面子を大切に

以前中国で荷物を受け取った時、宅配業者側にミスがあったので電話しました。ところが明らかに向こうの方が悪いのに、謝罪はなく言い訳ばかりしてきます。形だけでも謝るなら丸く収まるのに、なぜ間違いを認めないんだとイライラしたことを覚えています。

また中国は弁論能力がある人、口が達者な人が多く、会議や討議の場でも一発でパーフェクトな答えを出そうとする人が多く感じます。

なぜなら中国人は非常に面子を大切にするからです。謝罪をすると自分の間違いを認めることになるので、謝罪をせず言い訳を並べることによって、面子を保っているわけです。「報連相」が苦手なのもこの面子ゆえだと思われます。相談せずに一人でやってのけたい、一発でパーフェクトな結果を出したいという事ですね。

②面子を大切にする方法

ですから人前で叱ることはできるだけ避けましょう。それは人前でその人は無能だと知らしめることになり、その人の面子をつぶすことになります。それは彼らにとって非常に受け入れがたいことで、それをきっかけに退職する人もいるほどです。ですから、叱るならできるだけ二人の時にしましょう。

さらに、失敗を認めようとしないときは、無理やり強要するよりも、事実をはっきりと指摘し「次どのようにできるか」といった前向きな点を強調するならば、相手は受け入れやすいかもしれません。

コツ3 本社との関わり方を考慮する

①日本本社と中国駐在員の間で

中国での駐在生活で意外と見落としがちなのが、日本の本社との間で生じるトラブルです。駐在員の間では俗にOKY(お前が・ここに来て・やってみろ)とも言われています。

日本の本社は中国での詳しい状況が想像しにくく、日本の常識で指示を出したり、人事・スケジュールを決めることが多いです。しかし上記にも少し述べたように、中国では日本では考えられないようなことが多発します。

②変更、遅延、時間がかかることはよくある

振込日・納期日などの期日が急に変更または遅延される、出荷直前に製品の初歩的な問題が発生する、従業員やスタッフの仕事の呑み込みの悪さや精度の悪さから仕事量が激増する、国や省の許可を必要とする事務処理が適切に対応してもらえないなど…

私も中国で生活する中、インターネットの繋がりが悪くメールの送受信に思った以上時間がかかることや、交通手段が限られるので他社への往復で体力を消耗したり、「報連相」ができておらず出直しになったり…と細かなことで結構なストレスを感じました。

その現状を理解してもらえず、「これぐらいできて当たり前」「お前が何とかしろ」という本社からの対応を受け続けるとストレスは溜まります。

OKYという言葉ができたのも、そのような中国駐在員の心の叫びともいえますね。

③日本本社との認識の違いを解決するには

この中国という独特な環境ゆえに、優秀な社員やアメリカなど外国赴任経験のある人であっても、身体を病んで退職に追い込まれるという方もいらっしゃいます。

ですから、今中国で事業をされている企業やこれから事業展開を考えている企業は、現地目線で事情を理解し、サポートできる体制を準備されることをお勧めします。

また実際に現地に赴くビジネスマンは、このような落とし穴があるということも踏まえたうえで、心の準備や対策を立てておくことをお勧めします。

まとめ

お隣の国でありながら、コミュニケーションの取り方、仕事に対する考え方が大きく違うことがお判りいただけたでしょうか。どちらが良くてどちらが悪いという考え方ではなく、どの文化や習慣からも良い点や学ぶ点があるという気持ちを持ち、また十分に文化的背景を理解したうえで中国人に接するなら、あなたの中国ビジネスは円滑に進み始めるでしょう。

中国ビジネスでの成功は、ビジネスマンとしても人としても大きな成長につながり、その後のキャリアアップにもつながっていきます。ここで取り上げた三つのコツが、現在または今後中国ビジネスに関わる方々のお役に立つことを願っています。

気をつけるポイント!

・あいまいな言い方や遠回しな話し方を避け、はっきりと主張する
・こまめに進捗状況を確認する(アポイントは早すぎない
・ビジネスにおいて「個人主義」の文化だということをわきまえておく
・チームプレーのメリットを強調する 
人前では叱らない
・謝罪を強要するよりも、次どのようにできるかを強調する
・本社側は現地目線で事情を理解しサポートする体制を準備する