中国ビジネス

第5回【働いた人だけが知っている】中国ビジネス体験記『総合商社勤務の五十嵐(仮名)さん』

みなさん、こんにちは!今回は、第5回目となる駐在員の方の体験記ですが、仕事に特化してご紹介します。

直近十数年で素晴らしい経済発展を遂げている中国は、ビジネスでも世界の中心と位置付けられています。中国でビジネスを行った経験がない方には、中国人とのコミュニケーションに困った経験もあると思います。今回は、

『中国で仕事をする上で重要な10の心得!』

について、詳しく解説します!

日本とは文化的な違いがあり、あらゆるビジネスシーンで配慮が必要になりますので、ぜひ記事を参考にしてみてください。

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目次

中国で仕事をする上で重要な10の心得

~中国初心者が抑えるべきポイント~

①論理的な会話だけを重要視しない

日本のビジネスの現場において、『いかに論理的であるか』が重要視されがちです。上司への説得や客先への営業などにはあらゆるデータを揃え、その内容が合理的であるかが議論の中心となります。

特に現在はあらゆる情報が世に出ていることもあり、誰にとっても情報獲得の手段に偏りが少ないないこともその傾向を加速させている要因です。

一方、中国ではその状況は異なります。もちろんビジネスシーンでは一定の合理性は求められますが、中国人から見ると『日本人は何かを始めるにあたって、根拠を求めすぎている』と考えられることもしばしば。中国人は論理的であることのみならず、『思いに寄り添うこと』も大切にしています。

【体験談】
経験談にはなりますが、中国に駐在している日本人駐在員Aさんが、ある中国人社員に対し業務の改善を指示する際、その部下である中国人社員は全く聞く耳を持ちませんでした。別の中国人社員から『Aさんの言っていることはいつも正しいが、社員をねぎらい寄り添う気持ちが足りない。だから社員に指示が通らない。』と愚痴を聞くことがありました。Aさんに対し、私からその内容を伝えた結果、Aさんは会話の節々に『大変なお仕事いつもご苦労様です。』や『非常に大変な立場ですよね。』など相手を尊重した上で指示を行うようになりました。反発していた中国人社員も最終的にはAさんとの信頼関係を築くこととなり、指示系統が充実するということがありました。

日本以上に『建前ではない生身の人間の会話』が求められるので、是非中国で仕事をする時は心にも重きを置いたコミュニケーションを意識してみてください。

②面子を尊重する

中国人は『面子』を大切にしています。ここでいう面子とは『周囲からどのように見られているか』という意味になります。中国人と仕事をする上では切っても切り離せない考え方の一つです。

【例1】
ある会話をする際には、その会話を誰が聞いているか等の環境確認が必要です。例えば、日本人駐在者が部下である中国人社員の課長に対して問題を指摘する時に、その課長の部下の前で、その課長を叱責した場合、本人はどう思うでしょうか。恐らくその課長は面子が傷つけられたと感じ、日本人駐在者との信頼関係の構築も困難になります。

【例2】
また、社外でも面子を意識した会話は重要であり、会話の相手が総経理(日本でいう社長)などの高級役職者である場合は、最大限の敬意を以って接する必要があります。現地では会食もよくありますが、中国式の乾杯のマナー(後ほど説明)などもありますので事前に学んで参加することをお勧めします。

③プライベートの関係も大切にする

最近の日本ではオープンな関係よりもプライバシーを重要視する動きがあります。接し方によってはハラスメントと認められる場合もあり、立ち振る舞いが難しい環境になっており、時間と共に〇〇ハラスメントという言葉が増えている現状です。

一方、中国ではまだまだ個人間のプライベートな内容も関係性の構築には必要です。これはもちろん相手とカジュアルに接するというだけではなく、その人を知ろうとする姿勢が重要であり、相手に不快な思いをさせる行為ではないことが前提です。

【例1】
例えば、個人に関するイベントとしては相手の誕生日などがありますが、日にちを覚えておき、食事に誘うなどをすると本人から本音が引き出せるなど、仕事だけでは把握できない部分も見えてきます。

日本では最近あまり好ましくないとされる家族などに関する会話も中国では相手を知る為の一つのツールとなっていますので、食事の際にうまく聞き出すと相手の生活環境を知ることになり、より良い関係構築に繋がる可能性があります。

また、その他イベントとして、社員旅行などもありますが、積極的に交流を深めることをお勧めします。

さらに、中国には旧正月(春節)で『紅包(ホンバオ)』と言われるちょっとしたお小遣いのようなものを配布する文化もあり、この文化も社員とのコミュニケーションを図る機会となります。役職によっては部下が多くなり、その出費も多額になりますが、ポジティブにとらえ、良好な関係構築に繋げると良いでしょう。

④毅然とした態度とブレない判断軸を持つ

これまで中国人に対する感情的なアプローチが必要とは説明しましたが、一方で交渉などにおいて、譲れない条件等がある場合は毅然とした態度とブレない判断軸を持つことが重要となります。

中国人は日本人に比較し、仕事でも感情を重要視していますが、それを利用し一歩踏み込んだストレートな交渉を行う場合があります。

価格交渉の場面でも、日本では遠まわしな表現や相手を尊重するシーンも見られますが、中国では情に訴えることも作戦の一つとなります。その重要な交渉の局面で相手の顔色をうかがうばかりだと、要求を受け入れてしまうこととになり、最終的に会社や個人の利益が毀損される可能性があります。

特に契約など、お金に関わるビジネスの重要なシーンでは相手との対話は丁寧に行いつつも、譲れないラインはしっかりとイメージしておくことを心掛けましょう。

⑤リスク管理に重点を置く

世界的に環境変化が激しい時代となっていますが、中国は先進国の中でも圧倒的な経済成長力を背景に直近十数年で素晴らしい発展を遂げました。

他方、急激な発展に伴うリスクが増加していることも確かで、生み出されては倒産していく企業の数も多く、ビジネスマンは正しい環境認識が必要となります。

その背景もあり、中国人のビジネス思考は日本人に比べ『考えるばかりではなく、まずは挑戦』という意識が強いです。その為、日本人として中国で仕事をする場合はより一層のリスクに対する感度が求められます。

新たに取引を開始する会社がある場合は入念に財務状況を確認し、十分にリスクを認識した上で取引を開始しましょう。取引を開始した後も債権の回収状況の確認は定期的に行うことをお勧めします。特に取引先の社長や財務担当と頻繁に面談をすることで細かな変化に気づきやすくなります。

⑥金額で評価を行う

日本で『年収かやりがいか』というような議論がよく出てきます。『彼であれば給料に関係なく、この仕事を自主的にやり遂げてくれるはず』というような発言も日本の労働文化の中ではよく耳にします。

しかし、中国人の考え方とは文化的に違いがあり、仕事のパフォーマンスはお金で評価するべきというのが中国の一般的な考え方となります。どれだけ言葉で社員のパフォーマンスを評価しても納得させることはできません。

日本とは異なり、給与や賞与に満足ができない場合は、なぜその金額なのかなど、反発が多々あります。

人事制度の構築や社外への報酬支払の際は、『成果報酬型』の考えが基礎となりますので、それを意識した制度作りや対外対応を心掛けましょう。

自社に制度構築のノウハウがない場合は、月間数千元でコンサルティングを行ってくれる人事関係のコンサルも存在しますので必要に応じて頼ってみてはいかがでしょうか。

⑦仕事の指示は明確に

日本でのビジネスの考えの一つに『言われたことだけでなく、自分なりに付加価値をつけて成果を出す』というものがありますが、中国でその考えのまま部下に指示を出す場合に問題が生じる可能性があります。

そのような文化が根付いている日系企業の中であれば問題はないですが、多くの中国人労働者は指示された内容のみを遂行するに留まります。

『なぜ言われたことしかできないんだ』と指摘すると、『なぜ指示を明確にしなかったのか』と逆に聞き返される可能性もあります。

指示を出す場合は目的を明確にし、行動させるべき内容を具体化し、その行動で生み出すべき成果(KPI)まで定量的に表しましょう。回り道をするようですが、後で無駄な時間を減らすことに繋がってくるはずです。

⑧時間外勤務の認識の違い

日本では最近『働き方改革』がトレンドになっており、残業や休日出勤を美学としてきた文化が徐々に変化しつつあります。中国はその点では先進的で、残業は特別なことが無い限りしないですし、休日にサービスで出勤することは考えられません。

【体験談】
実際に私の職場は午後5時半が退勤定時でしたが、30分後の午後6時には90%の社員は既に退勤しているという状況が普通でした。また、有事の際に休日出勤をお願いする場合でも手当の無い出勤は好まれませんでした。また、これは社内のみならず社外にも言えることで、問題が発生したが取引先の担当者は既に退勤していたということは多々あります。

中国では『定時を前提とした計画』と『時間外勤務の手当の設定』を事前に考え、時間内に問題を解決することを心掛けましょう。

⑨お酒の飲み方を工夫する

中国のイメージには強いお酒をひたすら飲み続けるというものがあると思いますが、現状としてそこには認識に誤りがあります。

確かに一部の地方には強いお酒を飲む文化はあると思いますが、ほとんどは日本同様に飲む人もいれば飲まない人もいるという状況で、特に最近の若者は会食などでお酒をひたすら飲み続けることは少ないです。

実際に私自身もお酒は強くないので大量のお酒を飲むことはできませんが、問題なくビジネスでも私生活でも対人関係を築いています。飲むお酒の強さや量が重要ではなく、相手へリスペクトがあるかどうかがそれ以上に重要です。

【体験談】
ここからはテクニックの話になりますが、早い段階で酔っぱらったふりをすることでお酒を飲み続けることを避けることができます。中国人はお酒を飲むことよりもお酒を通して見える相手の人間性を重要にしており、酔っぱらった姿を見て『自分との飲み会で頑張って飲んでくれたんだ』と認識し上機嫌になることがあります。その雰囲気を敢えて利用し、日頃聞けない本音の部分を引き出すと仕事にも生かせるはずです。

中国でお酒を飲む機会がある場合は、運転をする必要があることや体調が悪いなどの事情があれば、事前に伝えておけば問題はないので、過度にプレッシャーを感じる必要はありません。無理はせずに相手とのコミュニケーションに重きをおいて関係構築をしましょう。

但し、非常に偉い方と食事をする際は、『干杯(ガンベイ)』と言われた場合は、飲み切ることがマナーとなるケースもあるので、事前に難しいことを伝えるか、少し頑張って飲むか、失礼のない対応が必要です。

⑩キャッシュレス社会

ビジネスには費用の立替や給料の受け取りなどお金に関する事務作業が多く存在します。日本であれば現金があればどうにかなる場合が多いですが、中国はこの十数年で凄まじいスピードでキャッシュレスが浸透しました。

支払先によっては現金を受け取らない場合もあり、客先との会食費用などが支払えないなどトラブルに巻き込まれる可能性があります。中国に入国したらまずは銀行口座の開設とキャッシュレスアプリとの口座連携を行い、支払いをスムーズに行う手筈を整えましょう。

まとめ

10つのポイントを見ていかがでしょうか。日本とのギャップに驚いた方もいらっしゃると思います。

国をまたぐビジネスにおいては、自分の考えが非常識であるという感覚を常に持ち、相手の文化を知ろうとする姿勢を崩してはなりません。特に国際的な緊張が高まっている今こそ、歴史や文化に触れる機会を増やし、ビジネスにおける成功につなげましょう

昔から日本の報道には中国に関して歪曲した内容があったり、偏った報道をしたり、あまり良い印象が持たれないことが多いですが、実際に中国で働いてみると人々の熱量や日々の変化に感動することが多く、中国を好きになって帰る人もたくさんいます。中国でビジネスをすることが決まった方は、刺激的で変化の激しい中国を楽しんでみてください。

気をつけるポイント!

・一緒に仕事をする人の思いに寄り添う
・中国人の面子を大切にする
・プライベートな内容を話すのも関係性の構築には必要
・ぶれない心とリスク管理
・金額で仕事を評価する
・仕事の指示は明確に
・残業はさせないように
・キャッシュレス社会に適応すること